ミヒャエル・バラックは、一般的には「運の悪い選手」と考えられている。
その名が一躍世界にとどろいた2001−2002シーズンも、結局はブンデスリーガ、DFB杯、チャンピオンズリーグとことごとく「2位
」に終わり、名誉なのか不名誉なのかよく分からない「準三冠」を達成。シーズン後の日韓W杯でも、前評判の悪かったドイツ代表を決勝まで導いたが、結果
はまたしても準優勝。さらに、サッカー選手なら誰もが夢見るW杯の決勝戦を、イエローカード累積により出場停止(そのカードも、一枚目は「どうしてあれがイエローなのか」と本人もファンも首をかしげざるを得ない、理不尽なものだった)。決勝戦を寂しくベンチ観戦するバラックの姿は世界中の同情を集め、雑誌の投票か何かで「世界でもっとも不運な選手」にも選ばれた。
だが「不運な選手」のイメージを決定づけたのは、それから6年後の2007−2008シーズンだろう。イングランドのチェルシーFCに移籍したバラックは、スタメンとして活躍しつつ、プレミアリーグ、カーリング杯、チャンピオンズリーグでことごとく「2位
」を達成。シーズン後のEUROでも、ファンの「もしや…」という不安を裏切らずに準優勝を果
たし、二度目の「準四冠」を成し遂げた。「ewige Zweite(永遠の二位)」――ドイツメディアはそんな風にバラックを呼び、以後、それはまるで肩書きのように、常に彼にまとわりついた。
かくいう私も、彼が2010年の南アフリカW杯直前に重傷を負ったときには「それでこそバラック」と思い、そのツイてなさ加減を再認識したものだった。※その時の心情は「サッカーは続く」に詳しい。
だがその一方で、「実はバラックって、言われているほど“不運”ではないのでは?」という矛盾した思いもある。確かにW杯やチャンピオンズリーグの国際大会では2位
ばかりで、「シルバーコレクター」などと呼ばれている。だがそうしたあだ名をつけられるのは、それだけ何度も決勝の舞台に立っているということ。その「舞台」にすら一度もたどりつけない選手も多いなか、何度も決勝で戦ってきたバラックのどこが不運なのか。勝負事は勝つことが全て。確かにそうかもしれないが、スポーツ選手にとっては、最高の舞台でプレーすることそのものも、最高の喜びであるはずだ。
※この観戦記は前置きが長いです。観戦記だけを読みたい方はこちらからどうぞ。
羽野羊子
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文
フリーライター。といってもスポーツライターではなく、サッカー観戦は完全に趣味。今回のドイツ旅行も全て自腹。
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[これまで執筆した観戦記]
●ドイツ対アイルランド観戦記
(2002年W杯)
●今日、ドイツの街で
(2006年W杯・開幕戦PV観戦記)
●サッカーは続く。
(バラック代表引退に寄せて)
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