ドラマの予感と、復活の狼煙

 並外れて心臓が強いバラックは、舞台が大きければ大きいほど輝く。「もうダメか」と思われた今季、復活のきっかけをつかんだのはチャンピオンズリーグだった。
 グループリーグでチェルシーと同組になったとき、ほとんどのファンは運命めいたものを感じたのではないか。昨年5月まで所属していた前クラブとの対戦。なにやら、ドラマが起こる予感がする。

 グループリーグ第一戦は、そのチェルシーとの対戦だった。チェルシーを知り尽くしているバラックはスタメンで起用される。その期待に応え、格上の強豪相手に「さすが」というところを見せつけた。後半、バラックが交代でベンチに下がった直後に点を入れられたことも、彼の株を上げた要因だった。   第二戦のゲンク戦では、1対0とリードした後半に出場。アディショナルタイムに鮮烈なボレーシュートでゴールを決め、「バラック復活」の狼煙を上げた。
 そして迎える第三戦。ブンデスリーガではなかなか波に乗れないレヴァークーゼンだが、バラック個人は上り調子だ。チャンピオンズリーグには並々ならぬ 意欲を燃やす彼のこと、きっといいプレーを見せてくれるはず。そんな期待を胸に10月18日、関空を飛び立ちドイツに向かった。


後半から出場したゲンク戦でのゴールが、バラック復活の狼煙となった。写真は、ピッチに入る前に監督から指示を受けているところ。


 レヴァークーゼン市。日本の学校指定の地図にも載っていない、人口約10万の小さな町。私の住む田舎町よりも人口が少ない。2001-2002シーズンに世界中を驚嘆させたクラブが、こんなのどかな町にあるなんて。そんな思いにとらわれながら、紅葉に色づきはじめたレヴァークーゼンの街を歩いた。
 バラックがいる・いないに関わらず、レヴァークーゼンは今でも一番好きなクラブだ。そのクラブのホームタウンの「空気」を感じたくて、レヴァークーゼン市のホテルに2泊した。恐らく日本で唯一の「レヴァークーゼン観光案内」のページでも作ろうかと思ったが、結局、歩いたのは駅からスタジアムまでの道のりと、レヴァークーゼン・ミッテ駅周辺だけ。そんな短い滞在だったが、歩いてみて感じたのは「空が広い」ということ。遠くに見えるバイエル工場の煙突のほかに、高い建物がほとんどない。駅の真ん前に大聖堂がそびえ立ち、周囲にも高い建物が建ち並ぶケルンから来ただけに、余計に空が広く感じた。
 すぐ近くに大都市があるから、商業的に発展する必要がないのだろう。駅前にこじんまりした繁華街があるだけで、すぐ後ろには一戸建ての住宅街が広がる。街の歴史が浅く、旧市街もないので観光するには味気ないかもしれないが、緑の多い住みやすそうな街だと思った。

⇒続く